2014年3月2日日曜日

Après l'interview... 〜リシャール・インタビューこぼれ話(リシャールの人柄)〜

本編のインタビューに書くとちょっと脇道から逸れてしまうことをここで。


シャルルヴィルのデュカル広場

今回のプチインタビュー、まったくもって驚きの連続でした…。

質問自体は、シンガポールから帰ってからわりとすぐの12月末にリシャールに送っていました。

でも、性格的に、あまり物事に期待はしないたちなので、今回も、返事が返ってきたら、ラッキーだわ、ぐらいに思っていました。

リシャールも、リストを送った時、ちょっと時間かかるかもしれないけど返事するね、とは言っていましたが、向こうは忙しいし、何せ、私は、単なる一ファンにすぎないので、まあ返ってこなくても、またいつか別の機会にトライすればいいやぐらいに思っていました。

そして、実際、2月になっても、返事はなく、あー、やっぱりダメだったかと諦めかけたところ、たまたま、ソウルガラコンには来ないんだよね?(ってわざわざ聞くのもどうかと思うが苦笑。)と確認するついでに、そういえば、ランボーの質問は…。とおずおずと聞いてみたら、リシャールから、「リストを再送してくれるかな?遅くなってしまってごめんね。」と返事が返ってきました。

というわけで、質問を再送したところ、次の日に(!)、ご存知のとおり、かなりがっつり書き込まれた回答が返ってきました。しかも、わざわざ自分の回答は太字にしたり、すごく几帳面に書かれていて、こっちが恐縮してしまいました。

返事が返ってきただけでも望外の喜びだったのですが、同時にこんなにも真剣にリシャールが答えを考えてくれたことに深い感動を覚えました。。。が、こんなに真面目に答えていただけたのはよいけれど、これ、私の微妙ブログに載せるっていうので果たしていいのか?&私の微妙な訳で大丈夫なのか??という不安も同時に生まれました(→常に若干ネガティブ思考(苦笑))。

今回のインタビュー、もちろんリシャールのランボーのミュージカルについて聞きたい/紹介したいというのが第一の目的だったわけですが、同時に「翻訳をする」という面でもいろいろな気づきがありました。というわけで、今回、翻訳をしながら思ったこと、感じたこと等についてちょっと書いてみようと思います。

リシャールのフランス語

リシャールのフランス語はFBの文章で見ている限りでは、シンプルでわかりやすい文体だと思っていたので、今回のインタビューをお願いするにあたっては、答えはフランス語で大丈夫です、とお伝えしていました。(白状をすると、実は質問は、時間の制約上、半分ぐらいはフランス語で残り半分ぐらいが英語で書いていました(普段は一応フランス語にする努力はするのですが…。(→言い訳(汗)))。)

そして、返ってきたリシャールのフランス語の回答ですが、見ていて8割ぐらいは、Google翻訳と私の浅いフランス語の知識でだいたいの意味は理解できたのですが、やはり残りの2割がどうしてもよくわからず、「リシャール、あなたの言いたいことがわからない…。」とぶつぶつつぶやいていました(苦笑)。

フランス語を勉強し始めて2年ちょっとになりますが、やはり条件法やちょっと上級な表現が出てくると挫折します苦笑。

例えば、リシャールがアルノーさんにミュージカルを一緒に作ろうと提案した下りの下記の文章。

Sans savoir que 5 ans plus tard, en décembre 2004, je lui proposerais d’écrire un spectacle sur Arthur Rimbaud.

Sans savoir que、と proposeraisの訳にがっつり挫折しました。。。最初の私の訳は実は、「5年後の2014年12月になるとは思わなかったけれど、僕は、彼にアルチュール・ランボーについてのミュージカルを作ろうと提案した。」という派手な誤訳でした(汗)。条件法の形が何を意味しているのか全くわからず(正解は、過去の時点から、未来について語っているために条件法になっている。英語で言うとI would proposeの意味。)、完全なるフィーリング訳(爆)。Sans savoir queもどう係っているのか「??」でした。

せっかくすてきな文章を書いてもらったのに、それをちゃんと理解&表現しきれない自分がほんと情けなかったです。

最終的にわからない部分については、フレンチミューの草分けのMewさんにいろいろご教授いただき、リシャールの想いをどうにか形にすることができました(どん詰まりの中、救いの手を差し伸べてくださったMewさんには本当に感謝です。)。


インタビューの翻訳をするということ

自分は普段、仕事上で翻訳をする機会はあっても、基本、ビジネス文書なので、インタビュー記事を訳すという機会はほとんどありません。というわけでインタビューした人がどんな人であるかということを考えなければいけないということもあまりありません。

でも、インタビューの場合、その人の個性が結構はっきり言葉の中に表れるので、その人の言葉を日本語にするとしたら、果たしてどんな言葉を使うだろうか、と考えることがかなり重要になってきたりします。

簡単な例で言えば、"Je"はフランス語では一通りしかありませんが、日本語では、私、僕、俺、等々「自分」を示す言葉がたくさんあります。今回リシャールだったら?と考えたとき、俺、は変だし、私だと固くなりすぎるので、僕としてみました。(リシャールのちょっと素朴なところも「僕」だと表現できるかなと思い(笑)。)

また、vousも日本語訳のスタンダードはおそらく「あなた」ですが、今回、敢えてリシャール目線で「君たち」という表現を使ってみました。(人によるのだとは思うのですが、フランス語圏で芸能人がファンの人に向けてyouという呼びかけを行う場合、vousのほうがtuより出現率が高いような気がします。でも、このvousはファンへの親しみも込められたvousなのかなと思います。)

また、「です、ます」調にするか、もっとカジュアルな表現にするかでも翻訳の印象がだいぶ変わってきます。今回は、紙上インタビューという形を取っていましたが、ざっくばらんに話している感じを出したかったので、表現もですます調にせず、カジュアルな感じにしてみました。

というわけで、今回、ある意味リシャールになりきって、リシャールならどう言うだろう、と考えながら翻訳をしていたわけですが(笑)、そういう経験は、普段の生活ではほとんどないので個人的にすごく面白かったです。彼の誠実な性格が滲み出るようにしつつも、同時に彼のチャーミングさも感じられるよう翻訳をしたつもりなのですが、それがうまく伝わっているでしょうか?

文章から垣間見えるリシャールの性格

翻訳をすると、普段何となく流し読みをしてわかったつもりになっているような部分もきちんと理解しようとするので、文章からその人の人と成りが結構わかってきたりするのですが、リシャールの翻訳をしていてすごく思ったのは、彼の知的さと誠実さがすごく表れているということでした。これらは、実際会ってお話をさせてもらったり、メッセのやりとりとかでもそう感じてはいたのですが、実際にこういうかなり長い文章を書いてもらって改めてそれを実感させられました。

まず、インタビューの回答が、どれも簡潔で的を得たもの、かつ、ちゃんと中身があるものであることにすごく驚きました。質問リストを送るときに、他のファンの人もランボーのことを知りたがっているから、その詳細を教えてほしい&ぜひその内容をシェアさせてほしい、とお願いをしていたのですが、ちゃんとその趣旨を理解して、かつ私のそれぞれの質問の意図を汲み取って回答してくれたのがすごくうれしかったです。インタビューって意外と自分の言いたいことを話して脇道に逸れてしまうことも結構多いのですが、リシャールはそういうことが全然なかったです。

そして、実は、最後のファンへのメッセージは、当初の質問とは別に後から追加でお願いをしたものなのですが(これ、かなりリシャールには申し訳なかったのですが、どうしても、これだけは入れたかったので、無理言ってお願いをしました。)、この返事、実は、私がお願いをしてから30分後くらいで返ってきたものでした。まず、即レスで返してくれたということ自体に驚きですが、それだけの短い時間であれだけ流れがある知的な文章を書けるというのは、やはり頭の回転が早い人なんだなあとすごく思いました(年下の自分がこんなことを言うのも何様、という気はするのですが(汗)、素朴に「さすが、リシャール!」と尊敬の念を抱きました。)。

そして、翻訳をしていてふと気づいたのですが、リシャール、ランボーのことをRimbaudと表記せず、le poèteと表現していたり、Vitalieのことをsa mèreと表現しているところが結構ありました。そういう部分からも彼の詩的センス(という言い方でいいのか?)というかインテリ度をけっこう感じました(端的に言うと文章がちょっと小洒落ている。)。


思いがけない展開

実は、翻訳にあたって、Mewさん以外にもフランス語を大学で専攻していた友人にフランス語のことばの感覚について質問したり、私のnon-nativeな英語をチェックしてもらうために帰国子女の友人にちょっと応援をお願いしていました。二人とも、フレンチミューは見たことがなく、あまりフレンチミューの話自体もしたことがなかった子たちでした。

今回、協力をお願いするにあたって、背景知識がないとかなり謎だと思ったので、二人にことの成り行きや、ランボーについての説明等々をすることになったのですが、その中で、(これは自分でも全く予想していなかったことなのですが。)二人が、フレンチミュージカルやリシャール、そしてランボーのミュージカル、おもしろそうだね、と言ってくれました。

「趣味は何?」と聞かれて、「フレンチミュージカルを見ることです。」と答えると、たいてい「?」という反応が返ってきて、何となく微妙な空気が流れます(苦笑)。というわけで、フレンチミューつながりで知り合った人以外とは基本的にはあまりミュージカルの話はしないようにしていました。(クローゼットファン笑。)

ですが、今回たまたま成り行き上、フレンチミューについて説明することになり、想定外に(いい意味で)興味を持ってもらうことができて、これは自分にとってうれしい驚きでした。このインタビューによって、ほんの少しですが、フレンチミューの輪を広げることができたのかなと思います。そういう意味でも、今回このインタビュー企画をやって良かったなと思いました&リシャールに感謝。(そして、自分でちょっと笑えたのが、リシャールについて友人に説明しているときの自分が、何だか"親戚ががんばっているんだけど、いろいろ大変そうなの…。"、みたいなモードになっていたこと。。。どんだけ思い入れがあるのよ、自分、と自分に突っ込んでしまいました笑。勝手な親戚感覚(爆))。


ここから全て始まったんだなあ。本当に懐かしい。
最後に…

リシャールは、自分のミュージカルということで、いろいろ一人でやっているようで、最近忙しいのか(そういえば、もうすぐNDPのルクセンブルク公演も始まるしね。)FB上も無言であることが多いですが、近いうちにいいニュースが聞ければなあと思います。

なんだか、自分の適当な翻訳感想記になってしまいましたが…実は、リシャールやパートナーのアルノーさんにランボーについてインタビューする(できれば対面、口頭で。)、というのは、自分にとって、一ファン、そしてフランス語学習者としての一つの大きな目標でした。(叶うかどうかは別として、とりあえず、目標は高く、と思って作った目標でした。)

口頭で、という部分でこそ、まだまだ道半ばですが、紙面という形でその夢に大きく近づけたことは、自分にとって、何事にも代え難い経験でした。自分が今まで手掛けた翻訳の中で、一番、無心&夢中になって取り組んでいた気がします。

自分の半ば無謀なお願いに真摯に応えてくれたリシャールには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。リシャール本当にありがとう。

2013年5月のガラコンあとの、フランス語の練習も兼ねての熱心すぎる(苦笑)ランボーの曲感想メッセから始まり、シンガポール公演のときのカード等、若干リシャールからするとうざかったかもしれないのですが(苦笑)、そういった自分の想いが、少しでもリシャールに伝わっていたのなら、自分は本当にうれしいです。

いつも、間違いだらけのフランス語、ときに英語が入り交じっている私のメッセやtweetを辛抱強く読んで、丁寧にお返事をくれるリシャールやアルノーさんには、いくら感謝しても感謝したりません。彼らからもらう一言一言が文字通り、私にとっては宝物であり、私が前に進む原動力になっています。

個人的なプロジェクトということで、大きなプロダクションの作品にはないいろいろな苦労もあるのではないかと思うのですが、彼ら2人の想いが少しでも多くの人に伝わることを願ってやみません。

次回どこかでリシャールand/orアルノーさんに会うときまでには、あまりにも悲惨なフランス語のスピーキング力を何とか底上げしたいなと思います(これかなりハードル高し。)。そして、Google翻訳依存症からも、一刻も早く抜け出すよう努力していきたいと思います。(同じくハードル高し。苦笑。)

さて、これからもがんばらなければ…^^;


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